私は、見ることによって見失ってしまったものを
見ることによって取り戻すことを試みる。
見ることによって人は世界を明瞭なものとするその一方で、
見ることの堆積は、時に私たちの目をふさぐ。

密かに手に入れたそれを手のひらにのせて、ニエプスはつぶやいた。
網膜(rétines)、と。
それが写真(photographie)と呼ばれるようになるのは、
彼がこの世を去ったずっとあとの話だ。

見ることによって見失ってしまったなにものか。
もし私の写真がそれらを示すものとなり得たなら、
それは古より伝わる叡智や詩歌、舞いや祈りと同期するだろう。
文化も言葉も習慣の違いをも乗り越えて。


圓井義典